量子状態、エンタングルメント等雑記
エンタングルメント、という単語は量子物理に興味のある人であればいくらか興味があるだろう。エンタングルメント状態という前にまず量子物理の「重ね合わせ状態」についてその内容を説明したい。
重ね合わせ状態というとよく「確率的な重ね合わせ」などという表現をされる。しかし、重ね合わせというのはわかりにくい。
ただ、重ね合わせ状態は測定という操作によって壊れる。これは射影公理と呼ばれるのだが、「測定をすると特定の値をとる状態に変わってしまう」という内容である。
射影公理はこのような「重ね合わせ」がなかなか「見えない」原因でもある。すなわち
「一回測定すると必ずその結果になる」という結果を生み出してしまい、「重なってないじゃないか」と言えてしまうし、また「測定しなければ値は分からない」ことと「測定しなければ値は決まらない」を濫用しているのではないか、という批判もありうる。
いな、今までにそのような批判はいくらでも受けてきたし、実際問題として、それでも「値は決まらない」という立場が強められる結果が出続けてきた。
量子論において「重ね合わせ」が重要になるのはやはり「(交換しない)物理量の測定」ということがある。(注:交換しないというのは量子計算では定義できるが、平たく言えば互いのものを量る操作が相手の量に影響を及ぼす性質があって、その性質がどういうものかを議論するしかたである)つまり、ある物理量に着目した時、
「それと(交換しない)別の物理量で測定をすると、測定後に重ね合わせ状態で記述しなければならない」
ということである。
したがって、ある「重ね合わせ状態」を作るときは大概「測定」を行なって別の状態を指定する。その測定操作がどのようなものかはともかく、うまい測定があると「確実にこの状態で他の状態になり得ない」ということがあったとき、それのことを「純粋状態」とよぶ。
純粋状態にたいして、それが部分系を持つとき、「エンタングルメント状態」というものを考えられる。すなわち、ある部分系の状態が決まったとき、別の部分系の状態が決まってしまうが、その部分系の状態は決まっていない、というようなときがある。それをエンタングルメント状態と呼ぶ。たとえば、
2つのコインがある。2枚は互いに違う向きになるとわかっているが、まだ投げる前で、どちらのコインに着目してもどちらが上か下かわからない、という状態である。
エンタングルメント状態では、片方だけに注目すると相手の状況に依存して自分の状況の確率分布を得るという状況になるので実は混合状態に見える。
混合状態であればエントロピーは非ゼロになる。このときのエントロピーのことを「エンタングルメントエントロピー」とよぶ。
エンタングルメントエントロピーは名前や計算手法的には熱力学エントロピーと対応づけたくなるが、違う性質がある。まず、隣接系とのもつれがあって、物理量が相手側と自分側とで「決まらない」ことに起因するため、「やりとり」に起因するという今までの熱力学の考え方とは異なる。つぎに、こちらのほうが本質的だろうが、全体系のエントロピーが0なのに部分系が非ゼロで、もちろん正ということでいわゆる平衡エントロピーの足し算則が破れる。また、体積則も守られない。
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