電磁気学のレビューII
今井功先生の「電磁気学を考える」という本を入手し、多少ながら読んだ。
電磁気学を考えるの公理としては
(1)ベクトル場E,B,D,Hの存在
(2)ベクトル場E,Bの幾何的性質特に「発散」によって電荷を定義
(3)マクスウェル応力テンソルの定義及び電磁場と物質を含めた全体でのエネルギー運動量の保存
おおまかにはこのような公理設定である。(多少過不足があり)
電磁気学を理解している人であればここから電磁気学のあらゆる現象を説明できると言われてもまあさもありなん、という感じに思うだろう。これを公理にする教科書は他に見たことはない。初学者は教科書と講義の論理の違いや教科書同士の組み立て方の違いには敏感で統一を求める声も多くあるように感じる。
電磁気学とは少し異なるが、電磁気学は古くから流儀がたくさんあって、その立場に応じて「単位系」が成立してきた歴史がある。すなわち、単位系が乱立している。
電磁絡みの単位の乱立は単位系の統一でCGSをやめてMKSベースにすることになった一因なのではないかと思う。いずれにせよ、単位統一の流れというのが国際的に進んでいる。それは力学や電磁気学においても、論理の統一を要望する声とも通ずる気がする。
さて、現代の電磁気の授業というのは様々なニーズを背景に持って行われている。
かたや
・ゲージ場理論のうち最も研究が進んでいる具体例
・あらゆるスケールの現象を記述し認識する例
というような形で、基礎物理学、応用物理学の立場からリファレンスすることにもなれば
・光を含めた電磁波を扱う工学の基礎知識
・電子回路などを扱う場面で知識を広げる
といったかたちで非常に広い。
そのような広さを踏まえて考えてみると、どのような授業を考えても偏りが出ざるを得ない。しかし、「教養」という枠組みで理系では電磁気学を扱うことが多い。
こういう考え方をすると「●●のための電磁気学」という講義と教科書がいいようにも思えるが果たしてそうなのか。
難しいことではあるが、大学のこのような学問というのは、やっぱり複数の、できれば異なる立場で書かれたものを見て、それらの違いに戸惑い、最後に結びついたときにこそ理解が深まるような気がする。
単位の話に振り返ると立場の違う単位をつじつま合わせするには無用な係数の導入が必要になる。それだけ計算ミスを起こす原因になり、過去、多くの事故その他不経済なことを引き起こしてきた上、やはり立場が違うのをまたぐのは理解にも苦しむ面はある。
だが、1960年にSIの現行定義が決まって単位の統一がいよいよ進み始めたにもかかわらず、今を持ってなお抵抗者がいるという事実は統一が持つ不合理性が大きいことの反映にも見える。
CGSで記述された電磁気学教科書は新刊では見ないが、そういうのも見直してみるといいと思う。
0コメント